神を呼ぶ場所「善五郎の滝」

善五郎滝とムラサキヤシオツツジ

善五郎の滝に行くには、乗鞍観光センターからさらに1㎞ほど
乗鞍エコーライン(県道84号線)を上がります。

Mt.乗鞍スノーリゾート第三駐車場まであと600m、というところに
「善五郎の滝 入り口」という環境省の看板が立っています。

そこから徒歩で20分ほど下ると、落差22m、幅約8mの勇壮な滝が現れます。
滝口(滝の上部)の標高は1525mです。

善五郎の滝は、乗鞍火山の高天ヶ原火山体から流れ出た溶岩の端に出来た滝。
溶岩を削りながら徐々に後退しているため、滝の手前には昔の滝壺が丸く残っています。

ムラサキヤシオツツジが美しい6月も人気ですが、
真冬のスノーシューツアーや、凍った滝を登るアイスクライミングのスポットとしても有名です。
映画のロケ地として使われることもあります。

滝見台からは乗鞍岳と滝を同時に見ることができます。
朝日を受けて虹が立つこともあり、訪れる人が絶えません。

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【善五郎の滝豆知識】

では善五郎とは一体誰なのでしょう。
古文書によると文化・文政時代(1804~1830年)ごろに
大野川(乗鞍高原の入り口付近の集落)に住んでいた杣人(そまびと)、
すなわち木こりだったようです。

善五郎滝と乗鞍岳

善五郎は仕事の合間によくイワナ釣りに行っていたそうで、
あるとき小大野川へ入り上流へとつりあげていきました。
しかし一向にイワナがかからないので先へ先へと進むうち、
大きな滝の下まで来てしまいました。

日が暮れかかっているにもかかわらず、善五郎はその滝つぼに針を投げ込みました。
すると途端に手ごたえがあり、竿が強く引っ張られたのです。
善五郎は何十年もイワナを釣ってきた名人でしたが
これほど強い「引き」を経験したことはなく、滝壺へと引きずり込まれそうになりました。
善五郎は恐怖を感じて竿を手放し、滝壺から大急ぎで離れ家まで一目散に逃げ帰ったということです。
この話が広まり、滝は「善五郎の滝」と呼ばれるようになりました。

しかし善五郎を滝壺に引きずり込もうとしたのは、本当に滝の主の大イワナだったのでしょうか。


一説によると、この滝は古くから乗鞍修験の重要な「行場」だったと伝えられています。
ここは「行者が神を呼ぶ場所」とされていたそうです。

となると、善五郎を震え上がらせたのは「滝の神様」、
もしくは善五郎には見えない場所にいた修験者の「呪術」だったかもしれません。

いずれにせよ神聖な行場で「殺生(せっしょう)」をしようとした善五郎は、
とても怖い目に遭ったということです。
文化文政時代は、乗鞍岳を道場として修行した高名な修験者
「宝徳霊神(ほうとくれいじん)」が活躍した時代でもあります。
その時代、この滝に「善五郎の滝」という名前を付けたことによって、
「ここで釣りをすると滝壺に引き込まれる」という戒めが
約200年後の現代まで語り継がれることになったわけです。

かつては「神を呼ぶ場所」だったとされる清浄無垢な滝。
敬虔な気持ちで、足を踏み入れてください。

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善五郎滝と乗鞍岳